ぎょぎょぎょらん

娯楽施設やお洒落なカフェがあまりないこの国で、

街に出掛けたときの楽しみはマーケット散策だ。

マーケット=市場には不細工な野菜や果物や山で採ってきたような草が

季節ごとに顔ぶれを変えて並んでいる。

曲がったナスも、熟しすぎたバナナも、どう見ても雑草な山菜も、

皿に盛られて、段ボールの切れ端に値段が書かれている。

売り子はだいたいおばちゃんで、

「フレッシュ!」「ナイス!」と客に呼び掛ける。

 

たいてい魚介類のコーナーが隣接されており、そこを見るのも面白い。

色鮮やかな海水魚が横たわっていたり、数匹の川魚が蔓でくくられてぶら下がっていたり、貝が山積みされていたり。

買うのはなかなか勇気がいるが…

 

首都のマーケットは港が近いため、魚介類が特に充実している。

ウニがパックいっぱいに入って300円とかで売られているし、

ナマコとか海ぶどう(もどき)などの変わった食材も手に入る。

 

そして先日のこと。ある食材を見つけた。

魚卵だ。

大型の魚が丸ごと売られているコーナーを歩いているときに見つけたのだが、

ここの人って魚卵とか食べるんだなぁ。

売り場のおじちゃんによると、キハダマグロの魚卵だそうだ。

ソテーだかボイルだかして食べるらしい。

白子とごっちゃになって売られていたが、袋いっぱいで(1㎏くらい?)300円ほど。

安い。そしてこんなにいらん。

とは思ったけれど、そのときは友人とホームパーティーの買い出しで来ており、

彼が好奇心旺盛な人間でもあったため、

2人してチャレンジ精神丸出しで大量の魚卵を購入した。

見た目はかなりグロテスク

他のメンバーから「なぜそんなものを?」と冷たい目で見られたが、

簡単に下処理して焼いただけのものを皆で食べてみると、

これがなかなか美味かった。

ご飯にのっけたら、完全に焼きたらこ。

大量にあったが見事消費しきった。

 

さて、この魚卵を目にしたときから考えていたこと…

明太子作れるんじゃないの?

マグロだし、粒はちっちゃいけれど、それっぽいものはできるはず。

明太子、大好きなのだ。

食べたい!早速材料揃えよう!

 

てことで本日、活動後にダッシュでひとり首都のマーケットに向かったのだ。

片道1時間かけて。

おじちゃん、雑にスーパーの袋(穴あき)に魚卵を直に入れるもんだから、

ナニかの液体が滴る滴る

のは前回購入したときに学習していたので、破れてない袋を持参。

魚卵と料理酒の代わりに購入したウォッカを手にぶら下げて帰宅。

ウォッカ、375mlで魚卵の5倍以上のお値段

痛い出費である。

てゆーか、ウォッカで代用してもよかったのだろうか…

なにはともあれ、材料は揃った。

 

早速シンクに魚卵を広げる。

部屋に充満する生臭いかほり。

まずは下処理しないとね。 

 

――下処理手順の覚書――

材料:魚卵・下漬け用液(酒と塩)

1.魚卵は2本で1セットになってるので切り離す。白子をがあったら別にしておく。

2.切り口から魚卵がこぼれないよう丁寧に洗いながら、太い血管やまとわりついてる薄い膜をできるだけ剥ぐ。皮を破らないように。

3.塩を振って冷蔵庫で1時間放置。

 

ここで思う。

むむむ、魚卵より白子の割合が多いではないか。

前回は魚卵ばかりだったのに。

商品の内容や品質が一定しないのもこの国ならでは。

かまわん、一緒に漬けてしまえ

 

シャワーしたり洗濯物をやってる間に1時間が経過した模様。

魚卵(&白子)から出てきた水分をさっと洗い流す。

さて、下漬けだ。

と、ふとあることに気付く。

アニサキス。寄生虫だ。

摂取すると激しい腹痛や嘔吐を引き起こす恐ろしいやつだ。

加熱や冷凍で死滅するらしい。

 

以前購入したときはおじちゃんが冷凍庫から出してきたものだったのだが、

今回は他の鮮魚とともに店頭に並べられていたものだ。

もし仕入れたばかりのもので、一度凍結されたものでないのならば、

寄生虫が生きている可能性がある。

念のため一回冷凍したほうがいいな…

我が家のワンドア冷蔵庫のちっさい冷凍スペースでしっかり凍結されるかは微妙だが。

すぐに下漬け調理に入りたいところだが、安全第一。

はやる気持ちを抑え、魚卵たちを冷凍スペースへ。

冷蔵庫の冷却レベルを5から7(MAXレベル)にスイッチ。

 

炊きたて白ご飯に明太子を想像しながら、

今夜はもんもんと過ごすことになりそうだ。