夏を知らせる甘いやつ
歩いていると、道端にはよく果物の皮が落ちている。
現地人は買ったりもいだりした果物を食べ食べ、道をゆったりと歩くのだ。
そして皮はぽいっとそこらに投げる。
ちなみにべたにバナナ率が高い。
ただ、果物の皮ならともかく、
スナック等の袋も同じ感覚で捨てられているのは悲しいことだ。
もともと自然に帰るものばかりで生活していた彼らには、
自然には戻らない人工物に対する知識が備わっていない。
環境教育もこの国の大きな課題である…
とそれは今日は置いといて、
最近はバナナに代わって、赤みがかった緑色の果実の皮がそこらに捨てられている。
裏にはわずかにオレンジ色の果肉がくっついている。
マンゴーだ。
本格的な夏が巡ってくる頃、ここはマンゴーの季節になる。
マーケットには所狭しと数種類のマンゴーが並べられ、甘い香りが漂う。
マンゴーの木がある民家では、背が高く生い茂った枝からぶら下がる果実を落とそうと、
子ども達が懸命に棒を振るっている。
マンゴーの出回る季節は短い。
1ヶ月ちょっとも経てば、あっという間に姿を消す。
旬を楽しむ。
ここでの暮らしはそれを実践するのにうってつけだ。
欲しいときにいつでも手に入れることができない、というのは煩わしいこともあるが、
それほど重要な条件ではないのだとつくづく思う。
さて、マンゴーが流通し出してしばらく、
なんとなく買いそびれていたのだが、日本でそうそう食べられるものでもないからやはり食いだめておこうと、地元のマーケットに足を運んだ。
最も多く出回っているのが、グリーンの果皮のやや小ぶりのマンゴー。赤みを帯びているものも。
一見未熟だけれど、中身はきれいなオレンジ色に熟している。
若い実も酸味があってさわやかで美味しい。一盛り(4つくらい)で60円とか。
その次が、細長い形のやつ。ペリカンマンゴーっていうのかな。
繊維多めだけど、甘さと程良い酸味で美味。3つで60円くらい。
で、価格がこの二つの3倍以上するやつがある。実は大ぶりで一個単位で売られている。
種類はピーチマンゴーか何かだと聞いたけれど。
出荷量も限られているようで、あまり見掛けず、まだ食べたことはない。
が、ダントツで一番美味しいらしい。
小銭を握って汗だくでマーケットを物色。
あるある。売り場はほぼマンゴー一色だ。
まずはよく見る緑色のマンゴーを購入。
続いてあの大ぶりのマンゴーを発見。地方のマーケットなのに珍しいなぁ。
せっかくなので、ひとつだけ買ってみた。
高いけどね。食べてみたかったし。とは言っても日本じゃ破格のお値段だけれども。
さぁ帰ろうかと思っていると、緑色のマンゴー一盛りを半額で売ってるおばちゃんが。
商品は若干しなびていたが、猿酒にでもしてみようかと二盛り購入。
そしてまた、汗だくになりながら帰宅した。
先に半額マンゴーを仕込んでしまおうと、
シンクにそいつを広げると、しなびてるくせに甘い香りがいっちょまえに漂う。
皮を剥き、豪快に手搾りマンゴージュースをつくる。
もうこのまま飲みたい…衝動に駆られていると同居人が帰宅。
その手にはマンゴーが。
あー買ってたんだ―。ってお互い笑い合った。
その日の夕飯は同居人の地元家庭料理とマンゴー。
彼女の地元もまた南国。私も大好きな場所だ。
なつかしい味の夏ご飯とマンゴーは、暑さでくたびれた体に染みた。
ビール買ってくればよかった。
猿酒用に5個のマンゴーを消費した。
カウンターテーブルにはまだ、緑色のマンゴー9個と高級マンゴー1個が積まれている。
旬は美味しい。
体が夏に馴染んでいく。