満員バス~真夏のおしくらまんじゅう
いつも徒歩で通勤しているが、
今日は街で買い出しをしたので、バスで帰宅した。
メイン道路から外れた少し立地の悪い我が家の前まで行くバスは、相変わらず超満員だ。
近距離区間なら40~100円ほどで利用できるこの国のバス。
バスに乗れば大体どこにでも行けるほど、なかなか発達した交通手段だ。
ただ、メインの大きい道路を通るバス以外は1時間に1本が出る程度。
大きい道路から小道に逸れるとその先はかなり奥まで続いていることが多く、
そこにはたくさんの村があり、人が住んでいる。
だから、少ない本数しかない小道をゆくバスは、常に満員となる。
こちらのバスのつくりは、窓にガラスはなく、ドアもない。
雨の日は窓枠上部に取り付けられたシートをペロンと垂らすだけ。
最近は窓付きのきれいなバスも増えてきたものの、基本はこのスタイルだ。
前方に乗降口があり、乗るときもしくは降りるときにドライバーにお金を渡す。
バスカード的なものもあるが、ほとんど普及しておらず、
たまに利用する人がいるかと思えば、機械の読み取りが恐ろしく遅い。
シートは左側に2人掛け、右側に3人掛けが設置されている。
ただこのシートのサイズ、日本人がその通りに座っても肩がぶつかり合う広さ。
ここに体の大きい現地人がやってくると…
窮屈では済まないほどお互いに密着し合う。
しかし彼らはおかまいなしに、2列シートには2人、3列シートには3人で腰かける。
加えて、本数の少ないバスの場合は通路に立つ乗客もいる。
この通路がまた狭い。人一人がようやく通れる程度。
通路側に座っていると、肩に容赦なく現地人のお尻がぶつかってくる。
車内が混み始め、座席に空きがなくなると、
この狭い通路にお尻と腹が出たおじさんたちが立ち並ぶ。
座席からはシートに収まりきれないおばちゃんがはみ出している。
まさに鮨詰め。
明らかに定員オーバー、いや、重量オーバーのバスは、
でこぼこ道を縦に揺れ、横に揺れ、そこそこスピードを出して走っていく。
乗り心地は最悪だ。
卵を買って帰ったある日、その圧迫にやられて帰りついたら割れてしまっていたこともある。
卵、高いのに…
何度か東京でラッシュ時の満員電車に乗ったことがあるが、
密着度も体臭も、こっちの方が上回っていると思われる。揺れもすごい。
ただ、この東京の満員電車を経験したとき、
東京には絶対住めないと思ったものだが、
こっちの満員バスはそんなに悪くないと思うのだ。
ちっこい日本人が踏ん張っていれば、必ず席を譲られ、
重い荷物を持っている人がいれば、ここに置きなさいと声を掛け、
子どもの座る場所がなければ、誰の子でも構わず膝に抱え、
バスに乗り損ねそうになれば、乗客の誰かがベルを引いて止めてくれる。
そういった光景が当たり前に見ることができる。
東京の人間は冷たいとか、そういうのではなくて、
この国の人々のダイレクトなあたたかさは触れると本当に心地よい。
だからなのか、身動きがとれないほどに密着しても嫌な気持ちにならない。
むしろそこから伝わる高めの体温に、どことなく安心感を覚えるのだ。
たまに…
乗ってみたくなるのだ。