ライフライン事情あれこれ
夏時間を採用しているこの国。
先日から通常より1時間早まった日々が始まった。
そのためいつもと同じ時刻に帰宅しても、日はまだ高い。暑い。
今日も汗だくになって帰宅すると、郵便受けに封筒が入っていた。
郵便受けといっても、この国では郵便物を各家庭に配達するシステムはなく、
普通は郵便局の横に自分用のポストを設けるか、宛先を職場にして送ってもらうかする。
では、我が家の玄関横の郵便受けに入っていたものは何か。
これは公共料金の請求書だ。大家が入れたものだろう。
この国は発展途上国とは言われるけども、ライフラインはそれなりに整っている。
電気と水道は日本と同じようにそれぞれの会社と契約して毎月利用分の料金を支払い、
ガスは近場にあるガスを扱っている商店やガソリンスタンドからシリンダーを購入し、空になったら交換をしに行く。
それぞれの料金は電気は高く、ガスはまあ安いほうで、水道は激安だ。
電気と水道に関しては、利用料金を計算するために係りの人が各家庭のメーターをチェックするようになっている。
ただ…これがとてもいい加減なのである。
というのも、毎回正しい金額を提示するためには、きちんと毎月メーターをチェックしなければならない。
が、毎月メーターを調べるためにいちいち各家庭を周るなんて面倒くさいのだ。
そりゃそうだ。誰だってそんな手間のかかることは面倒くさい。
そしてこの国では…
面倒くさければときどきサボってもかまわないのである。
では、サボった月の利用料金はどうするのか?
推定するのである。
適当に係りの人が自分の感覚でその月の利用料金を決める。
エスティメイトビルだかプライスだかという言葉があり、それをそう呼ぶそうだ。
それは、こんないい加減な公共料金の請求が認められている、ということを意味している。
だから、今月はけっこう使ったなー、と思っても請求金額はそうでもなかったり、
留守がちにしててほとんど使ってないはずの月でも高額な請求がきたり、
なんてしょっちゅうである。
先ほどの郵便受けに入っていたものは電力会社からの請求書であった。
実は、ここ数カ月の間、私は電気料金を支払っていない。
たぶん今月も支払う必要はないだろう。
内容をチェックすると…そこには相場よりちょっと高めの金額が記されていた。
しかし、これにはカラクリがあり、
オンラインで改めて今月の利用料金を問い合わせると、案の定、こんな返事が返ってきた。
「あなたの今月の利用料金は “-○○ドル” です。今月は支払いの必要はありません。」
“-○○ドル”。
マイナスって何さ?
私、発電してんの?
事の始まりはいつもの3倍以上の額の請求が届いたことだった。
請求書の紙の方にはマイナス記号が書かれない。
だから「なんでこんなに高いんだ?」とかなり焦り、
考えても腑に落ちなかったので、
大家に原因を尋ねるもわからず、会社に問い合わせてみろと。
(ちなみにこの大家、過去に自分とこの電気料金をごまかして借用主に払わせていた前科がある)
電話は自信がなかったので電力会社にメールで問い合わせ。
そして、会社から帰ってきた返事がこのマイナス記号のくっついた利用料金であった。
なんでも、過去に過払いしていたらしく(おそらく過払いしていたのは前の住民だろう)、
それが今、利用料金をそこから差し引くことで帳尻を合わせているようなのだ。
私にとってはラッキーなのかもしれないが、過払いしていた前の住人は…
そして最近、ボランティア仲間のある友人が、
こういった会社の雑な管理によるトラブルの餌食となってしまった。
彼の住む地域はもともと断水になることが多い。
そしてその日も断水になったそうだ。が、いつまでたっても回復しない。
痺れを切らした彼が水道会社に電話すると…
なんと、断水ではなく、水を止められていたそうだ。
その理由が「2009年から支払いがなかったから」。
え?
いや、今、2014年ですけど?
もうすぐ2015年なりますけど?
その友人はそこに住み始めてまだ4ヶ月ほどである。
5年も放置していたのは会社側のミスで、
その帳尻合わせに今の住民を巻き込むのはあんまりな話である。
しかも彼いわく、請求されたアカウントの番号が明らかに違うらしい。
加えて、その金額を聞いてちょっと計算してみたところ、
いくら水道代が激安とはいえ5年分ともなればけっこな額にはなるだろうが、
それでもあまりにも高いのである。
いい加減すぎる…
対応のひどさに怒った彼は、
会社のトップの方の人に直談判をし、会社にミスを認めさせ、
3日で水道を復旧させることに成功したのであった。
そんな事件が解決した後、
よくよく詳しい話を聞いてみると、
実は支払われていなかったのは10年前からだったとか、
請求書はお隣さんのものだったとか、
この事件は会社の溜まりに溜まった未清算の数字を一気に見直したために起こったもので、
他にも巻き込まれた家庭が何件もあるとか、
ネタは満載である。
もしこんなことが自分の身に振りかかったら、きっと彼のようには動けない。
と思うと…
問題対応力をもっと磨かなければ、
とじわじわとこの国のペースに呑まれている自分を省みるのである。
余談だが、この国の水道管は古く、整備が追いついていないそうで、
供給される約7割の水が漏れているそうである。
残りの期間、どうか平穏に暮らせますよう。