とある小さな島国は

どんより曇り空。

ここ数日、晴れ間を見ていない。

これから夏になろうとしているのに、

いや、もう夏に切り替わっているはずなのに、肌寒い日が続く。

 

この国はいくつもの島々からなっており、

首都のある一番でっかい島は東側と西側でがらりと気候が異なる。

東側は雨の多い地域。年中湿度高め。

西側は日照りの多い地域。年中乾燥気味。

 

ちなみに私が住むのは東側の地域だ。

まー洗濯物の乾かないこと。

 

さて、夏なのに肌寒いこの異常気象はやはり地球温暖化のせいなのか。

いや肌寒いんだから別問題かしら。

 

それはさておき、職場のある現地スタッフは、

温暖化の影響により、

東側はより雨が多く降り、西側はより雨が降らなくなるだろう。

と言っていた。

これは一般的に認識されている地球温暖化による影響のひとつであるが、

実際にここ数年でこの島の東西の気候の差は大きくなっているそうだ。

これ以上に大雨または日照りが極端になれば、

ただでさえ未発達なこの国を支える漁業や農業の行く末が懸念される。

 

地球温暖化問題は騒がれ始めて久しいが、

これだけ規模の大きい問題となると、

解決することなんてあるのだろうか…と思ってしまう。

 

近隣のとある小さな島国は、海水面上昇により沈みそうだという。

世界は焦る。騒ぐ。

そして、対策を練る。

それがどの程度の効果を上げるかは不明で、

そもそも有効なのかも不確実で、

それでも何か対応しなければならない。

人類の未来を守るため、世界の一部の人々は必死になる。

 

…が、当の本人達はどうか?

今にも沈みそうな小さな島国の住民たちである。

私自身が彼らの生の声を聞いたわけではないし、

現場を目にしたわけでもないのだが、

ある知人の話によると、彼らはその問題に対し、

世間が騒ぐほどには関心がないのだという。

その知人は実際に現地へ出向き、問題に取り組んでいる人間の一人である。

 

彼らは一応知っているのだ。

自分達の住む国が沈んでなくなりそうなことを。

そして、

そうなった場合に、近隣諸国が移住先となり自分たちを受け入れてくれることも知っている。

だから気にしていないのだそうだ。

島がなくなれば、別の場所に移ればいい。と。

 

これに対し、

住民たちに危機感がなさすぎる、とか、

楽観的すぎる、とかっていう批判的な気持ちはない。

たぶん彼らがそのように考えるのは、

もっと別の焦点から、もっと単純にこの問題を捉えているからではないか、

と思うのだ。

 

ほんとのところは知らないが、

きっと先祖代々受け継がれてきた土地がなくなることは悲しいだろうし、

こんな小さな島出ていきたい、なんて思ってることはないだろう。

ただ、たとえそれが人為的な要因で引き起こされたものであったとしても、

大自然の力には敵わないことを知っているからなのではないだろうか。

先進国と呼ばれる国で生活する人々よりも、

ずっと自然に寄り添った生活をする彼らだから。

 

きっと彼らは住み続けるのだろうと思う。島が消えるその日まで。

 

では、このような強大な力に挑むことはもはや無意味なのか?

と言えば、それはもちろん違ってて、

問題解決のために奔走することも、

これはこれで自然と向き合うひとつの形であり、必要なことであると思う。

私たちがここに生きている限り。

 

世界各地に極端な気象現象を引き起こしている地球温暖化。

それは人類の心にも温度差を生み出しているのかもしれない。

 

なんてね。